アービトラージ取引

株式や為替、金利、債券、コモディティなど多くの商品が世界中のマーケット(市場)で日々取引されていますが、同じ商品であっても、市場の違いにより価格差が生じたり、現物の取引価格と先物の理論価格の間に価格差が生じたりすることがよくあります。

アービトラージ取引とは、「裁定取引」とも呼ばれ、この市場にできる価格差を利用して利益を獲得しようとする取引をいい、同一の性格を持つ2つの商品の間で、割安な方を買い、割高な方を売ることにより、理論上リスクなしで収益(利鞘)を確定させることができるものです。
その仕組みとして、市場の価格がいずれ理論価格に近づき、乖離(価格差)がなくなることで割高や割安な状態が解消され、そこで反対売買を行なうことによって利鞘を得ることができます。

例えば、日本の株式市場でよく行われるアービトラージ取引には、日経平均と日経平均先物を対象とした取引があります。これは、日経平均から日経平均先物の理論価格を算出し、日経平均先物に実際に付いている価格が理論価格を上回った時に「先物売り/現物買い」、一方で先物価格が理論価格を下回った時に「先物買い/現物売り」といった取引を行い、先物価格が理論価格にサヤ寄せした時に反対売買をすることで、その価格差分が利益となります。
(通常の取引では、先物価格は決済を先に伸ばしているため、理論上はその間の金利分だけ、現物価格よりも高くなるのが普通)

一般にアービトラージ取引はノーリスクに見えますが、それなりの収益を確保するためには高い専門性やノウハウが必要であり、裁定取引専門の市場参加者(アービトラージャー)も存在します。
また、実際に市場で成功するためには、
(1)特定の市場や商品に関して他の参加者より情報収集が容易であること(情報収集力)、
(2)豊富な資金力や取引ツールを持つこと(取引力)、
(3)万が一取引が途中で不成立になっても、損害を回避する手段があること(リスク管理力)、
などの強みが必要です。
なお、市場全体で見れば、アービトラージ取引は市場間の価格差を是正する方向に圧力をかけるため、市場の歪みを正し、適正な市場価格の形成に寄与しているとも言えます。

<市場でよくあるアービトラージ取引>
現物市場と先物市場との間のスプレッド
同一の先物で異なる限月間での「限月間スプレッド」
異なる先物市場間での「市場間スプレッド」
※東京証券取引所では、情報開示の一つとして、「裁定取引に係る現物株式の売買及び現物ポジション(全取引参加者報告合計)」を日々公表。