マイナス金利
マイナス金利は、金利がマイナスになることをいいます。これは、超低金利(ゼロ金利政策)の時に短期金利が一時的にマイナスになったり、インフレの時に名目金利から物価上昇分を差し引いた実質金利がマイナスになったりするケースを指します。また、その他に、中央銀行が金融緩和策の一つとして、「マイナス金利」を導入することもあります。
なお、金利とは、お金の貸し借りに対する使用料(賃借料)のことで、元金(元本)に対する利子(利息)の割合(利率)をいいます。
特殊な状況下でのマイナス金利
日常的な金融取引では、短期金融商品や国債などの金利(利回り)がマイナスになることはありませんが、超低金利時に短期金利が極めて稀にマイナスになったり、金融危機時に信用力の高い先進国の国債利回りがマイナスになったりすることがあります。
一般に債券取引では、売買価格が上昇すると流通利回りが低下し、マーケットの混乱などで、特定の国債に買いが集中すると売買価格が大きく上昇します。
この場合、売買価格には制限がないので、一定の水準を超えると利回りが0%を下回るマイナス金利となります。
実際、このようなケースは、深刻なデフレに見舞われた2000年代前半の日本や、リーマンショック時の米国、欧州債務危機時のドイツなどで発生しました。
政策としてのマイナス金利
マイナス金利政策とは、預金者に手数料を課すことで、預金すれば元金が目減りしてしまう状況を作り出すことをいいます。
これは、金融政策としては「最後の一手」とも言える手段で、デフレ脱却などを目標に、民間銀行に対して、企業や個人などへの融資(貸出)を促進して世の中に出回るお金を増し、経済を活性化させることを狙いとしています(一方で通貨高の抑制という側面もあり)。
2014年6月に、欧州中央銀行(ECB)が主要国・地域で初めて、民間銀行が中央銀行に預け入れる余剰資金の金利をマイナスにする(民間銀行が余剰資金を中央銀行に預け入れる場合に手数料を徴収する)政策を導入しました。
その狙いとして、民間銀行が余剰資金を中央銀行に預けておくと損する(コスト高になる)ため、経済合理性の観点から貸出に積極的になることを期待しています。
(一方で懐疑的な見方として、民間銀行の中には、マイナス金利のコストを借入者に転換することで、逆に貸出金利が上昇する恐れもあるとのこと)
なお、過去(2014年以前)には、デンマークやスウェーデンなどでマイナス金利の導入事例があり、その中でデンマークのケースでは、2012年7月に自国通貨高(クローネ高)を阻止するために導入し、一定の効果を上げたとされています。
日銀のマイナス金利政策
2016年1月29日の金融政策決定会合で、金融機関が日銀に預ける資金の金利を一部マイナスにする「マイナス金利政策」が導入されました。
これは、欧州で採用されている、階層毎にプラス・ゼロ・マイナス金利とする「階層構造方式」を採用し、日銀当座預金の一部に-0.1%のマイナス金利を適用するものとなっています。
その狙いとして、マイナス金利を導入することで市場金利が下がり、融資や株式投資などに資金が向かい、企業収益や賃金の改善を通じて景気回復や物価上昇につながる効果を期待しています。